古いものもなじむ住まい 熊本市東区/Oさん邸
熊本市内でも特に人気の高い熊本市東区。静かな住宅地の一角にある平行四辺形の変形地にOさん一家の新居は建っています。縁あってこの土地と巡り合ったというOさんご夫妻に話を伺いました。「この土地は一般的住宅地としては設計しづらく、人気がなかったみたいです。その分、土地の金額も手頃だったので『連空間デザイン研究所』だったらこの難しい土地も魅力に変えてくれるはず、と信じてお願いしました」と奥さま。
「最初に提案してくださった図面から変えた部分はほんの一ヵ所だけ。収納が確保されていた部分を、より景観を楽しむための坪庭にした、本当にそれだけだったんです。にもかかわらず、そこからじっくり週に一度、4ヵ月間の打合せがありました。玄関の広さや窓の高さや造作のキッチンの形、使用する木の素材選びまで、設計の方の細やかなレクチャーをいただきながら吟味することができました」と奥さまは振り返ります。「しっかり打合せができていたから、新居とはいえ昔から知っているかのように居心地がいいんですよ」とご主人は柔らかな表情を浮かべます。
そんなOさん邸を彩っていたのは、100年以上は建っていると思われる古い木製の家具や普遍的な魅力を放つインテリアたちでした。「幼い頃から母が“もの”を愛おしそうに眺めている姿を見て育ってきました。その影響で私も知らず知らずのうちに古いものや器、絵画を見ることが好きになっていたんですね」と懐かしそうに目を細める奥さま。美しい経年変化を遂げた家具は、ほとんどが奥さまのご実家にあったものだとか。ご自身で丹念に磨き上げて、大切に使ってきたものだそうです。「この家は新築ですが、古いものを置いても不思議と馴染みます。昔の丈夫で重厚なつくりにも負けないほど、丹念なものづくりをされている証拠ですよね」。
「私たちが求めたのは、“若い頃に建てた家”ではなくて、年齢を重ねても変わらずいいな、と思える家でした。『連空間デザイン研究所』との家づくりは、自分たちの暮らしを見つめ直す作業の連続でした。それぞれの木の特性を知り尽くしたプロが、ひと手間もふた手間もかけて考え、形にしてくださった造作の家具は、大切な宝物です」と奥さまは語ってくださいました。
家の中で気に入っているところは? と尋ねると、ご夫婦は口をそろえて「階段かな」とおっしゃいました。「踊り場に置いている絵は、私の大好きな絵なんです。実は、母が父に内緒で買っていたもので、ずっと私のアパートに隠していたんですよ」と奥さまが笑えば、ご主人も続けて「階段を登るときに、見上げた景色もいいんだよね。自然光越しに見る緑や、木製の窓枠のバランスは見る度に“いいな”と思えます」とお話してくださいました。何気ない日常の中に美しさを感じるOさん一家の暮らしぶりは、こちらまで羨ましくなるほどでした。