熊本市Oさん家族のしあわせ

 

一つ一つのモノへの愛を感じます。
母ゆずりだと思うんです...モノを長く大切にしなさいって。

 
愛着のあるモノたちを自在に受け入れてくれる家・・それがOさんが設計士に頼んだことだ。
かつてOさんが熊本市内の和食器を扱う店でアルバイトをしていたときのこと。ふらりとやってきた坊主頭の初老の男性から「僕もギャラリーやってるから見においでよ」、と声をかけられたことがきっかけだった。「それから何年も経って連さんと家づくりをすることになろうとは」、Oさんは面白そうに笑う。家を建てようと考え始めた頃からOさんが気になっていたのは平行四辺形の土地。どんな家ができるのかまったく想像がつかず、土地を購入する前ではあったが、家のプランを連空間デザイン研究所に作ってもらうことにした。出来上がったプランを見て、土地の購入を決め、完成した家はほぼ最初に提案されたプランのまま。ただ一点、奥さまの希望でキッチンとお風呂に面した納戸を坪庭へ変更したことで、ちょっとしたハプニングも起こっている。
「昨日もそこのキッチンに立ってたら、窓の外からぴゅーって水が飛んでくるんです。うわっと思ったら、主人と娘がお風呂場の窓からこっちの窓に向かって水鉄砲でシュッシュッってやって遊んでて。そんな日々のちょっとしたことだけど、この家でよかったなーって思うんです。」 設計士と感性や好みがあっていたのか、お気に入りのモノたちを家がどう受け入れるか考える家づくりは、毎回とても楽しかったそうだ。
家を建ててから6年。家の中を見渡してみると、家族それぞれが自分の居場所を自分の好みのモノで溢れかえらせている。そこにとりあえずのモノはない。1つ1つ時間をかけて吟味し、自分の感性を研ぎ澄まして選びぬいたという満足感が伝わってくる。それぞれにまつわる思い出を語る奥さまは本当にうれしそうで、自分を取り囲むモノへの愛に溢れている。
まだ小学生のお嬢さんのお気に入りは和室のベンチ式の出窓。「お部屋みたいだし、椅子みたいだし。」引っ越してきてからずっと、今でもやっぱり一番好きだという。さらにお嬢さんが自分のモノをとっかえひっかえ整理しているらしい押し入れは、既に十分お母さまのDNAの片鱗をのぞかせている。
「この玄関の帽子掛けは何年もかけてやっと納得いくものを見つけたんです。庭づくりももっとやってみたいし、イージーチェアも探してるんですけど・・・」
まだまだ続くOさんの家づくり。家という器に5年後10年後何が盛りつけられているのだろうか。ただ、そこにはいつも和室の出窓に満足げに腰かけているお嬢さんの姿があるような気がするのだった。
 

 

 
伊東さん、写真を撮っていてどんなこと、感じました?

 
家族それぞれの居場所やお気に入りがちゃんとあるんだろうな、というのが撮ってて思ったこと。お嬢ちゃんが小さいころからいっちょまえに自分のお気に入りスペースを確保、いくつになってもそこが好きでそこで過ごしている様子が簡単に想像できるんです。小さいころからずっとお気に入りの場所が同じって、シンプルだけどとても贅沢なことじゃないですか?
ご家族みんなモノを選ぶ目に愛情がある。思いを込めて大切にしている。今も家づくりが続いており、まだまだこれからも続いていく印象。
僕の自宅も床座だからかなぁ、うちはちゃぶ台みたいなのを置いてるんですけど、こう(机に手をおいて)妙に落ち着く感じがいいですね。マッシュ(Oさんの愛犬)とも仲良くなれて、とても楽しい撮影でした。
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